ビール雑感
酒は飲めるか?
ビール云々する前に、まず酒はダメな人がいる。僕もそうだった。今も弱いが、以前と比べて許容量は3倍以上になった。以前はビールではコップ1杯(約200ml)で真っ赤だったが、数ヶ月にわたる連日の訓練で今は750〜1000mlくらいまで大丈夫になった。練習すればある程度は飲めるようになるものだ。しかし生まれつきアルコール、もしくはその分解産物で二日酔いの原因のアセトアルデヒド分解酵素のある人とない人がいて、ない人はいくらがんばっても大して変わらないので無理しない方がいい。これは自分にも言い聞かせている。が、弱い人ほど後からどーんと来るのでしょっちゅう顔色が悪くなってしまう。大人なら自分の適量を知り、醜態を曝さず辛い思いもしないものだ。
ちなみにビールでは急性アルコール中毒にはならない、というのはおそらく嘘。アルコールに対する感受性は個人差が大きく、紅茶に1滴のブランデーを垂らしただけで真っ赤になる人もいるときく。それに当然僕も、ビールを若干多く飲み過ぎただけで大変気分が悪くなった事が何度もある。
酒に弱い人にとって、アルコール度の低いビールはまさに適当である。どれでも、たいてい5%程度だ。同じアルコール量でも、濃い酒よりも薄い酒の方が酔い方も緩徐で調節しやすい。それにビールならばどこにでもあるし、食事にも合う。バーでも気兼ねなく注文しよう。
ビールはうまいか?
子供の舌には、ビールはただ苦いだけでしかない。大人になればうまくなるかと思って、また大人がうまそうにゴクゴクゴクゴク・カーとか言ってるのを見てて早く飲めるようになりたいなーと思って30になったが、まだ苦いだけだった。ビールに限らず、酒はみんなアルコールくさくて美味しいと思わなかった。
上記のように、僕はそれを我慢して毎日飲み続けていたところだんだん苦さが感じなくなり、気がつくとビールは美味しい、という境地に達した。幸せだ。およそ3ヶ月かかった。それまではおっかなびっくり、今日のはなんか苦いな、なんて苦くて身震いしながら飲んでいたものだが。単に苦みの感覚が麻痺しただけかもしれない。大人はみんなこんな苦労をして会得しているのだろうか?僕だけか?当然、甘い物を食べた直後に飲めば今でも苦いし、銘柄によっては初めから苦いが、それでも許容範囲内になった。
個人的には、ビール初心者の練習用には一番搾りかスーパードライがいいと思う。いずれもそれほど強く苦みを感じない。もしくは、強そうに見えるが実は苦み少なくまろやかな、いわゆる黒ビールもいいかもしれない。
ビールの苦みはホップによるもので、おそらくホップが無いとむしろ甘いのだが、ホップ無しのビールというものはない。まずいのだろう。甘かったらこれほど食事にも合わないし、量も飲めない。
他に味わう酒があるとして、ビールは味わうものではない、という場合にはやや了承できる部分もあるが、現在日本の大手メーカーが宣伝しているように、ビールはのど越し、まで言われるとそれは違うと思う。作っている側からのど越し=味わうな、というのはおかしなものだ。ビールの味は確かに似ているものが多いが、それぞれ違いはある。のど越し云々は、日本の大メーカー製ビールが節操なく変化した結果、無難な薄いラガーばかりになり、いいから考えずに飲めと言ってるだけに過ぎない。
というわけでビールは飲めるようになった。他の酒については、やや寛容にはなったがあまり変わらない。いまだにウイスキーとか飲めるのは大人だなぁと思う。
ドラフト>>(超えられない壁)>>瓶>缶。 ビヤガーデン>ビヤホール>居酒屋>家
生とドラフトは同じこと、という人もいるが、ここではドラフト(on tap(英)、vom Fass(独))とは樽出しのことを言う。ちなみに生(ビール)とは除菌を加熱でなく濾過により行っているということで、だからうまいというわけではない。
ドラフトと瓶や缶、店で飲むのと家でで飲むのでもだいぶ味が違うと思う。後者は心理的要因が多いが、確かに店の方がうまい。同じ瓶でも保存コンディションや、どちらかというと新しいロットの製品が多いからかもしれない。ドラフトは注ぐ時に炭酸ガスを添加するためか(日本の場合。海外は知らない)。それにちゃんとした店では、銘柄に合った温度やグラスで出される。大まかに言って、エールはややぬるめの方が味わいやすい。いわゆるキンキンに冷やしたビールだと、のど越しはさわやかだが味はわからない。
ワインのようだが、ビールもまた同じ銘柄でも年によって味が違うと言われるが、違いは微妙だろう。それよりも日本で飲む場合には保存コンディションが問題で、例えば酵母入りビールは瓶内でさらに発酵が進むため、常温コンテナで2回赤道を超えて数ヶ月かけて日本に運んだものは味が変わってると思われる。それを現地の10倍くらいの価格で売ってたりするから、日本でうまい海外のビールを楽しむには多くの困難がある。
家で飲む場合、缶より瓶の方がうまい気がする。厳密に同じ内容物だとしたら、入れ物で味が変わるのか。味が変わるという事は、化学変化するのか、は知らない。ただ、缶はどうも金属(アルミ)臭が付くような気がする、特に缶からそのまま飲むとき。金属の酸化(錆び)防止のためにコーティーングされているという話も聞いたことがある。でもドラフトも普通は金属製だ。350ml〜1リットルか、10〜リットルかの違いだ。ただしここでいうドラフトはケグ・ビールという、大きい金属缶に入って店まで運ばれ、そこで炭酸ガスで押しだし、炭酸ガスをとけ込ませて出すような方式をいう。本当のドラフトはリアル・エールと呼ばれ、地下室に置いてある樽からポンプでくみ出す、当然炭酸ガスを後入れしたりはしない、昔ながらのものを言う。本来はそれが一番だそうだが、たぶん飲んだことはない。イギリスかアイルランドでも行かないと滅多に無いかもしれない。ドイツでは、パーティ用?の20リットル以上は入りそうな木の樽で注いでるのを見たことがあるが、これは醸造所でいきなり木樽に入れてるかどうか知らない。
瓶をラッパ飲みか、缶をそのままか、グラスに注ぐかについては、個人的にはやはりグラス、さらに言えばジョッキだと思う。アメリカの水っぽいビールをのどが渇いて飲む、特にビーチで、なんていう場合は瓶ラッパが雰囲気的にも最高だが、グラスに注がないとにおいもわからないし、泡のバランスも悪い。グラスを冷やす必要性は低いと思う。ジョッキはがっちりした作りだが、それは薄いグラスだとすぐ温まってしまうためだろう。ドイツでは、グラスをわざわざ冷やしておくようなマメな店は知らない。
日本では缶とペットボトルの普及で、瓶は容器としてのシェアは減っていると思うが、それでもおそらくアルコール飲料の容器としては瓶がいちばん多いのではないか。それだけ、瓶というのは中身を変質させない容器なのかもしれない。再生すれば環境にもやさしい。特にアルコールは嗜好品であり、味を好んで飲む人がいるので、また雰囲気も良いせいか、便利だからといってペットボトルや缶には変わりにくい。ちなみにドイツでは缶ビールというのはあまり見ない。みんな瓶を抱えて買っていく。
ドラフトがうまい理由は上記のようにいくつか考えられるが、さらに+αのうまさがありそうな気がする。ともかくドラフトを、できればさらに現地のビヤガーデンで飲むのが最高なのは、間違いない。
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